ワクチンの話し② 帯状疱疹ワクチンについて

 外来をしていますと、意外と帯状疱疹の患者さんに出会う確率は結構高いものです。いわゆるコロナ禍において帯状疱疹の患者さんの数が増加しましたが、それに関しては新型コロナ感染により、免疫細胞やその働きがダメージを受けることや、コロナ禍の心理的ストレスにより、免疫力が低下したことが原因として考えられています(JAMA Intern Med. 20211819):1243―5)新型コロナワクチン接種などによる影響で帯状疱疹が増えるのでは?という報告が一部散見され、ネットなどでも話題になりましたが、結果的に明らかにこの因果関係を裏付けるデータは今のところ示されておりません( 2022 Nov; 5(11): e2242240.)

 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウィルスに感染することで生じます。初感染時は水痘(水ぼうそう)を小児期に好発しますが、その後もウィルスは感染後終生にわたり主として脊髄の後根神経節というところに潜伏し、加齢や免疫低下などにより再活性し、帯状疱疹として発症します。約2/3は胸腹部などの体幹部に皮膚の症状が出現することから、米子でもそうですが一部の地域では『胴巻き』と呼ばれています。鼻の周囲や耳に生じる場合は重篤な合併症を生じる場合があり、そのような際は皮膚科や耳鼻咽喉科に紹介させて頂いてます。帯状疱疹は、約3人に1人が一生のうちに1度以上経験するとされています。通常は痛みやかゆみを伴う皮膚の症状が生じ、その後かさぶたとなって皮膚症状は治癒し、同時に痛みも治まっていくことが多いです。しかし皮膚症状が改善しても痛みの症状が3カ月以上残存する帯状疱疹後神経痛postherpetic neuralgiaPHN)といって激しい痛みを自覚されることがあり、患者さんも我々も治療や対応に困らされることを何度も経験しました。

 帯状疱疹の予防ワクチンとして以前より生ワクチン(ウィルスを弱毒化したもの)があります。有効性としては発症を51.3%減少、帯状疱疹後神経痛を66.5%減少させる(NEJM;352:2271-2284,2005)ものの、効果としては多少不十分でその効果が5年程度しかないことが問題でした。最近は世界初の組換えサブユニットワクチン(生ワクチンではない)であるシングリックス®が注目を集めています。国際共同第Ⅲ相試験では50歳以上で97.2%、70歳以上で91.3%、4年目の有効率は93.1%で、帯状疱疹後神経痛も有意に減少することが報告され(Lal H. et al.: N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015)、米国では帯状疱疹予防はシングリックス®のみが推奨対象となっております。また最近では平均9.6年の長期追跡調査試験も報告され、有効性の持続が示されました(Strezova A. et al.: Open Forum Infect Dis. 9(10) Oct 2022; ofac485,)

 現在、50歳以上の方、又は帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方を対象にシングリックス®の予防接種を当院でも行っております。ワクチンの筋肉注射を行い2カ月あけて、もう1回同じものを接種し(計2回)、その後の追加接種は現状では必要ありません。ワクチンを受けられる方の中にはCMやパンフレットを見た方に加え、家族が帯状疱疹後神経痛を発症し、そのつらさを間近で介護などで目の当たりにされて希望されるかたも今まで数人おられました。ただしこのワクチンを誰でもどうぞ、とはなりません。理由のひとつは副反応で、局所の痛み・腫れ、発熱、倦怠感などの頻度が比較的高いことです。ただしこれは長くても2‐3日程度でおさまるのが通常です。もう一つの理由は金額です。現在は鳥取県西部では日野町、江府町は公費助成をを行っておりますが、現在それ以外の市町村では行っておりません。ワクチンは保険診療ではありませんので、米子市にお住まいですと1回2万2千円程度で計2回で約4万4千円のお金がかかります。決して安いとは言えない価格ではありますが、帯状疱疹を予防できるのであれば十分打つ価値はあると考えます。ご不明な点などございましたら、診療の際などにでもお気軽にお尋ねください。

 

君はTVっ子

 高齢の患者さんが来院されるとテレビや昔の映画の話しをすることがあります。自分から近況や訴えを自発的に話してくれる方ならよいですが、認知症の影響もあってか無口な患者さんもおられます。一方的に私の質問だけにならないように、最近気になったニュースであるとか、好きな俳優さんであるとか、具体的な内容の回答も聞きたくて質問してます。患者さんの認知症の程度の確認も兼ねているのですが、毎回受診の度に『今日は何月何日何曜日ですか?』と聞くのも失礼ですので、これは私なりの工夫です。ただ昔のテレビや映画の話題に関しては私は少し自信がありまして、亡くなった祖母から長谷川一夫や田中絹代などの昔の映画スターの話しをよく聞いておりましたので、大体の日本映画や俳優の話しはついていける知識は持ち合わせていると自負しております。

 訪問診療に行きますと患者さん宅のテレビで西部劇などの昔のアメリカの映画や、韓国の時代劇のドラマ(おそらくCSでしょうか?)をやっていることが何故か多い印象があります。患者さんに聞くと大体『ただつけとるだけだがな』と言われ、あまり見てはおられないことがこれもまた多い印象がありますが、患者さんも私も誰も見ていない大音量のテレビの前でよく診察をしてます。過去にスティーブ・マックイーン主演の映画『大脱走』を患者さん宅のテレビで放送していたことがあり、患者さんも私もこの映画の大ファンで30分くらいずっと話しながら見続けた(無論診療はしました)結果、午後の診療に遅刻し大失敗をしたことがありました。ちなみに以後はそのような失敗はありません。

 私は本当に子どもの頃からテレビが大好きで、youtube全盛の時代にあっても、暇があればテレビをみてしまいます。自宅ではこの年齢になってもダラダラとテレビをつけて怠惰な生活を送ってしまうため、開業医になってもなるべく医院に残って本を読んだり、仕事をするようにしてます(いくつになってもダメですね)。最近テレビドラマでは『VIVANT』が話題になりましたが、私が楽しみにしている番組が昨日から始まりました。『DOC(ドック)2 あすへのカルテ』です。NHKの日曜日の午後11時からの海外ドラマ枠で、イタリア放送協会(公共放送)作成の医療ドラマで、今回はシーズン2になります。海外の医療ドラマをみると全部『ER』の二番煎じのような印象が拭いきれず、このドラマも海外の医療ドラマがただやっているな、くらいの感じで『情熱大陸』が面白くない時にたまたまチャンネルをあわせただけでした。イタリアのテレビドラマを見たのは初めてでしたが、はっきりいって『沼って』ます。主人公である医師、DOC(アンドレア)はある事故により過去12年の記憶を失いますが、類稀な観察能力、また抜群の診断能力(羨ましい!)は健在で、たくさんの患者さんの命を救います。しかしそこには色々な人間ドラマが交差していて、医師達も患者、家族達も皆葛藤を抱えていく描写が私が好きなところです。一応医師目線でみるとツッコミどころ満載な点もありますが、しばらく日曜日の夜が待ち遠しくなりそうです。

 

 

開院記念日

 昭和46年9月6日、当院は錦町の地に開業しました。本日は開院記念日になります(ちなみに休診日ではありません)。スタッフや建物は変わりましたが、『地域のかかりつけ医』になることを目標に理念は変わらず、日々診療を頑張り続けております。今後ともよろしくお願い申し上げます。

少年時代

 今日から9月ですが、まだ暑い日が続くようです。患者さんに『クーラーを家でかけてますか?』とまだ必ず聞いておりますが、無論自分も冷房を常にかけており、寝ている間も28℃に設定して寝てます。思いかえせば、若い頃に冷暖房のある生活をしたことがなく、自分に関してはその反動もあるかもしれません。

 高校は男子校に通っていましたが、その当時に校舎には冷暖房がなく、職員室ですら扇風機のみでした。幸いというべきか、校則が比較的緩い学校でしたので、決められた制服をまともに着ることはあまりなく、夏に関してはTシャツと短パンで登校し、特に体育の後などは上半身裸でパンツ一枚のスタイルで授業を聞いてました。私が特別『ヤバイ生徒』であった訳ではなく、クラスの数人はそういったスタイルで授業を聞いておりました。先生から授業中に当てられれば、その格好で英語や国語の教科書を朗読し、そのまま教壇に行き黒板に数学の答えを書いていたことを記憶しております。当然、というべきか『女子高もこんな感じなんやろーか?』と例年のごとく夏の時期になるとこの疑問が『パン一』の男達の間で話題になりました。非常に馬鹿な高校生の妄想は膨らみましたが、『絶対女子高がこんな感じな訳がないだろう』ことはさすがに気づいていました。

 お笑いコンビ、かまいたちの漫才で『タイムマシーンで過去に戻って一度だけやり直せるとしたら』ということをテーマにした有名な漫才のネタがあります。ボケ担当の山内が『コンビニで一番最初にポイントカード作りますか?と聞かれた時点に戻って、ポイントカードを作りたい』という話題を膨らませて漫才が進んでいきますが、自分自身も過去に戻れるならどこに戻るかなと、考えたことがあります。人生失敗だらけで過去に大きな失敗もしましたし、細かい失敗を挙げるとキリがありません。じゃあ、若いころに戻りたいかというとそれはあまりありません。決して悔いのない人生を過ごしている訳ではありませんが、若くなってまた似たような失敗を繰り返したり、恥をかいたり他人に迷惑をかけたくないのが本音です。一応若い頃から失敗して積み上げた反省もありますし、他の先生から見れば大したものではないかもしれないですが、今まで得られた知識や経験は代え難いものがあります。自分としては、このままで一応いい、と思っています。

 ただしひとつだけ出来るなら、パンツ一丁の高校生の自分に向かって『変なこと考えてないで、もっと勉強に集中しろや』ということだけは伝えてあげるかもしれないですね。

 

変わっていくもの

 先日、東海道新幹線の車内販売が今年の10月末で終了するというニュースが出ておりました。東海道新幹線の車内販売が終了へ!名物のアイスやコーヒー販売など今後のサービスについて紹介(LIMO) – Yahoo!ニュース 以前は新幹線に食堂車がありこれも2000年に廃止になった訳ですが、身近なところでいえば『特急やくも号』にもかつては車内販売、大昔には食堂車があった時代がありました。『やくも号』に関しては現在の381系車両(今の振り子電車)が導入される前まではディーゼル車で食堂車もありましたが、来年以降から順次『やくも号』の新型車両が導入されることにより、現役車両の381系も引退していきますので、これも時代の流れを感じさせます。

 ちょうど現在市内で『がいな祭り』が行われておりますが、昔の目玉といえば『ミス米子』を山陰放送が生中継していて、誰か近所の知った人が出ていないか、今年は誰が優勝するのか、楽しみで毎年家族でみていたことを記憶しております。またこの夏の時期のテレビ番組といえば、昔は全国高等学校野球選手権鳥取大会の開会式、1回戦から決勝戦までを日本海テレビで生中継していたことや、山陰放送で鳥取県高校野球ハイライトを深夜に放送していたことを思い出します。それぞれジェンダーやルッキズムの問題、野球人気の低迷の問題の影響もあってか、いずれもなくなってしまったことは理解できますが、以前から観ているものとしては正直にいえば寂しい気がします。

 当院では私に院長を交代をしてから胃カメラは行っておりません。今後また再開するかもしれませんが、今のところはその予定はありません。これに関しては私自身、循環器内科を中心として内科一般をやっていたことに加え、いろいろと私なりにしない理由があるのですが(ここでは割愛させて頂きます)、以前から通院して頂いておりました患者様にはご迷惑をおかけしております。申し訳ございません。父から引き継いで見直してやめたこと、新しく始めたこと、いろいろありますが、これからもずっと守り続けていきたいものがあります。夜間、休日の対応です。

 子供の頃から夕食の時や深夜寝静まっている時に自宅に電話がかかってきて、一人で医院に出かけていく父の姿や物音をいつも見聞きしてました。時にはかかりつけでもない、全くの初診の患者さんでも対応している時もありました。それでも平然といつも通りに生活し、毎朝早く起きて診療に出かける父の姿を見て、何時でも患者さんに対応できる父のような医師にいつかなりたいと思って医師を目指していました。当院では緊急性のある患者さんに関して夜間、休日問わず対応しています。お話しの内容を聴いて電話対応だけのこともありますし、電話相談も受けています。変わっていくものはたくさんありますが、山田内科のよい伝統は受け継ぎつつ、今後も地域の患者様のためにも頑張っていきたいと考えております。

 

夏の終わり

 連日酷暑が続いております。いつも元気すぎて過活動を気にしている心不全の患者さんが先日来院されました。毎日のように米子の中心部から遠くまで(日吉津のイオンとか)徒歩で買い物に行かれている方で非常に心配してる方ですが、『最近はどうですか?暑いですけど、イオンとか行かれてますか?』と私が質問したところ、『あんた、こんなに暑いのにそんなことする訳ないだろ。家で冷房つけて寝とるわ』と秒で返答され、逆に安心しました。それほどの暑さが続いております。

 学生時代のこの時期は山に登っていましたが、今の暑さならその当時の体力でも山に登れているか不安です。大学1年生の時に、帽子をかぶらずに山に登って熱中症になり、フラフラしながらなんとか富山県の剣岳から室堂方面を下山した覚えがあります。直射日光を髪が吸収して体温上昇を引き起こすという基本的なことを軽視してましたので、以後は手ぬぐいを頭に巻いて登山するようになりました。下山して北アルプスなら長野の上高地辺りの避暑地をジュースでも飲みながら、ブラブラするのが楽しみの一つでしたが、今の暑さなら日陰を探して休憩しているかもしれません。

 お盆期間に関しては日曜・祝日に加えて、14日、15日とお休みをさせて頂いております。12日は土曜日ですので、午前中までの診療となりますが、皆様にはご迷惑をおかけします。個人的には西部医師会急患診療所、某病院の当直などの予定もありますが、基本的には医院か自宅で、まだやっていない書類作成をやる予定です(このブログは気分転換で書いてます)。昔のように楽しい夏休みを過ごす、ということは当分なさそうですが、その分医院の急患対応等は十分出来そうですので、体調崩された方、体調面で相談したい方などはお気軽に当院にご連絡下さい。

山田内科ミニ・ニュース

①ダイソンの扇風機を購入しました

 発熱患者さんの対応で感染部屋を設けており、そこで診察をおこなっております。一応ダイソンの扇風機(冷風・温風あり)で夏、冬を対応しておりましたが、かなり以前のタイプの小さな扇風機で最近の酷暑には対応できないと考えまして、頭を悩ませておりました。当院では往診・訪問診療を昼休憩の時間を利用して出かけていますが、往診車内でFM山陰を流しており、午後1時過ぎから『デイリーフライヤー』という番組内で『ジャパネット』のラジオショッピングの番組をよく聴くことがあります。シャワーヘッドやエアコン、マットレスなどのいろいろな商品説明がありますが、最近はほぼ毎日のようにダイソンの扇風機のラジオ広告を聞いております。そうすると頭の中に扇風機の情報が詳細に刷り込まれていき(高田社長がシンガポールのダイソン本社で直接トップ商談を行わなければこの価格には至らなかった、なんと7m先まで冷風が届く、など)、ついに扇風機は購入してしまいました。なかなかの威力ですので発熱患者さんには快適とまではいいませんが、お役に立てるものと考えております。しかし、個人的にはあまり『ジャパネット』に洗脳されないように注意したいと思います。この時間は山陰放送の方がよいかもしれません。

②当院の先東看護師がJPTECの研修を修了しました

 JPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)とは交通事故などで外傷を受けた患者さんを病院前から病院内に到着するまでの標準的な外傷対応を学び、防ぎうる外傷死亡の防ぐための日本救急医学会公認の病院前外傷教育プログラムです。当院は内科ですが、今年医院の近くでも交通事故があり、路上で外傷者の対応にあたったことがありました。今回、その経験からJPTECの研修を当院の先東理恵子看護師が自ら希望され、先週鳥取市で受講されました。当日は若い研修医の先生、救命士さんが多かったようですが、負けずに看護師歴○○年(岸朝子並み)の経験を生かされ、頑張られたようです。交通事故などがないことに越したことはないですが、緊急時の際はこの研修を生かされることを期待したいと思います。先東看護師、お疲れ様でした。

お盆期間に関して

 『お知らせ』にも同じことを書きましたが、お盆期間に関しては(もうこんな時期の予定を書かないと思うと月日の早さが嫌になりますが)、日曜日、祭日は暦通りのお休み、8月14日(月)、8月15日(火)を当院は休診とさせて頂きます。8月12日(土)は通常通り、午後12時30分までの診療です。ご迷惑をお掛けしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。尚、定期訪問診療、またかかりつけ患者さんの急患対応等はこの限りではありませんので、いつでもご連絡ください。

 今年は出来たら墓参りに行き、その後夕方に時間あれば啓成小学校6年間で叩き込まれた『米子盆踊り』をしに、公会堂前広場にも足を運びたいと思います。米子市のホームページを見て、『米子盆踊り』が現在の実家のある富士見町が発祥の地であることを最近知りました。あれだけ小学校の運動会で練習し、踊りだけでなく、歌い手が都合が悪ければ私が代わりに『やぐら』の上で歌えるくらいの準備も常に出来ておりますので(音程はビミョー)、米子市民ほぼ全員出来るものだとずっと思っていましたが、どうもそうでないことも最近になって知りました(ケンミンSHOW並みの驚きです)。地元のことでも知らないことはまだまだ多いものだと、痛感する日々であります。

 

 

 

山陰労災病院の話し

 とうとう7月になりました。7月1日付けの新聞に山陰労災病院の新診療棟の完成がニュースに出ています(山陰労災病院の新診療棟完成 きょうから本格運用 | 日本海新聞 NetNihonkai (nnn.co.jp)※記事は会員制です)。たまに救急搬送の同乗で労災病院の新棟の救急外来に行かせて頂くことがあります。私のような方向音痴には旧棟と新棟の位置関係が分からず、帰りに迷子になったりすることがありますが、旧棟が取り壊されるまではそういった事態が続くかもしれません。

 父と私は労災病院とは微妙に縁があります。昭和38年に山陰労災病院は開院しましたが、当時の鳥取大学第一内科から私の父が派遣され、設立時の最初の医師、内科医として勤務しておりました。私は以前にもブログに書きましたが、山陰労災病院の卒後初期臨床研修制度の一期生でした。私の前の年までは、医学部を卒業するとその大半は、希望する大学の各診療科(消化器内科、循環器内科の各内科や外科、泌尿器科、皮膚科、耳鼻咽喉科など)にそのまま配属するのが普通でした。しかし私の卒業した年から卒後臨床研修制度が義務づけられ、2年間、各内科、外科をローテーションすることが必須となり、山陰労災病院も初期臨床研修医を初めて受け入れることになりました。産婦人科、小児科もローテーションが義務づけられてましたが、当時の労災病院にはありませんでしたので、それに関しては博愛病院や医療センターに行って研修させていただきました。

 とにかく何も出来ないやつでしたので、先生や看護師さんもどう自分を扱っていいか分からないし、自分自身もどう振舞ってよいか分からず毎日失敗ばかりでしたが、常に頼りがいのある先生方の背中ばかりみてました。今なら分からないことはネットで論文等を検索して勉強してますが、その時期はまだネット環境もよくありませんでしたので、先生方のやっていること、言ってることを常にメモして、それを仕事が終わってから夕方見直したり、夜中に教科書を読んだりする日々でした。労災病院の今の研修医がどんな生活を送っているか分かりません。私の送った研修医生活はテレビでみるような有名病院の研修医の生活とは全く異なり古くさいものでしたが、振り返ってみると今の自分にとってそんな無駄ではなかったように思います。

 本当は研修医時代の恩返しをするつもりで労災病院で勤務医を終えたかったですが、それは叶いませんでした。今はお世話になった先生方が大分退職され、病棟も変わってしまいましたが、母校のような気持ちを労災病院には持ってます。もう少しコロナ感染症が収束したいつの日か、機会があれば是非新しい労災病院をじっくり見学しに行くのを楽しみにしてます。

 

人は見た目が9割?

 元々自分の髪型や服装、身だしなみに無頓着な人間ですが、開業医になって若干考え方を変えました。勤務医の時はどうせ自分のことなんか誰も注目していやしない、俺は容姿での勝負はすでに諦めている、という信念のもと、2、3日ヒゲを剃らず、自分の顔も鏡で大して見ることはなく、毎日診療に出てました。しかし開業医になってからは自分が院長、病院の代表ですので、さすがにある程度は清潔感がないのはまずい、ということで、毎朝鏡をみてちゃんとヒゲを剃ったり、寝ぐせを直したり、と至極当然のことをするようになりました。

 若い頃、入院中のある患者さんから『ヒゲの濃い兄ちゃん』と言われていたことがあります。でも私はヒゲが濃いという自覚がその当時全くありませんでしたので、『誰ですか、それは?誰かと勘違いしてませんか?』と普通に聞き返していて、1ヶ月後くらいに自分のことだと気づいて驚いた記憶があります。最近はヒゲの医療脱毛をクリニックでもされているところが多いですが(当院では行う予定はありません)、私はヒゲが濃いので毎朝剃るのに時間がかかりますし、手間が省けることを考えると脱毛を受けるメリットは理解できます。ただし、近い将来、頭の髪の毛が本格的に薄くなった時に、ヒゲもないとなんだか全体的により寂しい感じのオジサンになることが予想されますので、多分今後も私が受けることはないと思います。

 見た目、という点では患者さんを診る点でも大事なことがあります。これは容姿、身なりを指している訳ではありません。患者さんの様子です。例えば、冷汗、苦悶様の表情、顔色不良を認めるような患者さんをみれば、その場で行った検査(心電図など)では特に問題なくてもこれはきっと重篤な病気が隠れているだろうと考えて、治療と並行して必死にその原因を探します。見た目の重篤感、というのは非常に大事に思っています。また、普段の診療でも患者さんが診察室に入ってくる様子に注目してます。スムーズに入ってこれるか、息切れをしてないか、どこか痛がる様子をしてないか、そういった情報に重要なヒントが隠されていることがありますので、入室される様子は必ずじっくり観察します。例えば、突然の背中の痛みで緊急で受診される患者さんがいたとします。その患者さんが診察室に痛そうな表情を浮かべながら、片方の手で同側の背中、腰の付近をおさえながら入ってくると、まずは尿管結石を予想して、問診をしたり検査をオーダーしていきます。もちろん本人の訴えは一番大事ですが、『見た目』も大事となります。

 暑い時期になり、熱中症も増えてきました。特に当院で多いと感じるのは高齢者の方の自宅での熱中症です。高齢者の方は暑さやのどの渇きを感じにくくなるため、冷房を避けることが多く、脱水になりやすいという特徴があります。熱い日の夕方頃から食事がとれなくなってきた、などの症状には熱中症が含まれていることがあります。普段の冷房などの適切な室温等の管理が重要なことは間違いないですが、本人が大丈夫、といっても『いつもと様子が違う』、ということを家族の方に気づいて頂くことが大事になることがあります。何か心配なことがありましたら、いつでも当院にご連絡ください。

 

 

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