勉強のお話し

 医学部の学生の頃の話しです。進級を決める試験があり、私が自信をもって選択肢を選び解答したところが、不正解になっていたことがありました。気になったためその科目の教科書で確認してみたところ、やはりその選択肢は正しい解答のようでした。担当されていた先生に偶然廊下で出会いその件を尋ねたところ、以下のように述べられました。『あー、それね。今はそんなことはしないよ。教科書は10年前、20年前のことが平気で書いてあるからね。教科書なんかで勉強したらダメだよ』。

 その発言を聞いた際に口にこそ出せませんが、『じゃあ、何使って勉強したらいいんだよ!』と、相当腹が立ったことを今でも覚えています。しかし今となってはその先生の言われる気持ちがよく分かります。大学受験で数学の三角関数や積分の公式が、『実はこれは最近こうじゃないんです』と訂正されることはまずありません。しかし医学ではこの前まで常識であったことはしばしば覆されます。急性心筋梗塞の初期治療で『MONA』というものがあります。M=Morphine(モルヒネ→鎮痛などの目的)、O=Oxygen(酸素投与)、N=Nitrate(ニトロ、硝酸剤の投与) 、A=Aspirin(アスピリン、いわゆる血液サラサラの薬をかみ砕いて飲む)の頭文字をとったもので、私自身も医師になってから心筋梗塞の患者さんを診たら、以前は酸素の値が悪くなくても酸素投与を行っていました。

 しかしここ何年かの間に急性心筋梗塞患者に対してのいわゆるルーチンの酸素投与を否定する論文が出てきたため(Circulation 2015;131:2143-2150,N Engl J Med 2017;377:1240-1249)、現在では酸素化の保たれた急性心筋梗塞の患者さんにやみくもに酸素投与を行うことはなくなりました。しかし今でも学生さんが読むような医学用の教科書、参考書を拝読すると、『MONA』という言葉はそのまま注釈なしに残っていることがあります。教科書が全く以てダメということはありませんが、編集されるまでにどうしても時間を要して発行されますので、最新の情報が載っているということはありませんし、それが発行してから数年たてば、時代に合わない記載が必ず出てきます。

 一番よいのは自分で最新の論文に目を通すことです。ただし毎週のように世界から新しい論文が発表され、それをすべて目を通すことは不可能です。SNSや医学系のニュースで大まかな情報を得て、気になれば論文を手に入れるか、または講演会や学会などに参加して、知識の整理やupdateすることも大事になります。

 ただある先輩からは『一番の勉強は自分で英語で論文を書くことだよ。どんどんね。』、と以前言われたことがあります。確かにそれもその通り、と思いますが、ここに関しては私は沈黙するしかありません…。偉そうにいろいろ書いてみましたが、勉強は嫌いではありませんが、得意でないことに改めて気付かされます。真の学問への道に至ることはなかなか難しいことを実感する毎日です。

 

新生活を迎える方へ

 4月になり入学、就職、転勤、または浪人生活、いろんな形の新生活を迎えた方がおられると思います。当院でも新生活で米子に転居された方が時々来院されるようになりました。当然ではありますが私にもそういった新生活を迎えた時期がありました。ただ私は高校、大学ともに同級生や学校内に誰も知り合いがいない状態からのスタートだったため、胸の高鳴りとは異なるドキドキを感じながら不安な日々を過ごしていました。入学して早々に楽しそうに花見などに繰り出している人やすぐに彼女と付き合い始めた人などを見て、ただただ羨ましい気持ちで教室のすみから眺めていた『ぼっち男子』でした。

 私自身、本当に社交性に乏しい人間で、結局最終的に学生生活の終わりになっても、学校に溶け込んだとは言い難く、何とか学生生活を乗り切りました。しかしこれは学生生活に留まりませんで、初期研修を行った山陰労災病院、その後に行った出雲の島根県立中央病院でも医師含め病院内に誰も全く知り合いがいないところからのスタートでした。特に私は現在の初期臨床研修医制度の一期生で、山陰労災病院も研修医を受け入れるのが初めてで、この使えない研修医(自分)をどう扱っていいのか、悩んだでしょうし、私自身もどう振舞ってよいか分からないまま研修医生活が終わった気がします。

 持ち前のガッツと根性で新生活をうまく乗り切り、今に至っております、と本当は書きたいところですが、全くそんな立派なものではありませんでした。ただそういった中でもこんな自分に救いの手を差し伸べてくれた人が必ずどの学校、職場でもいてくれたことは非常に心強かったですし、だから何とかやってこれました。いなければ、多分途中でやめていたか、どうなっていたのか自分でも分かりません。これを読んでいる方で新生活を迎えた方はそんなにおられないと思いますが、新生活、最初はしんどくても必ずなんとかなると信じて頑張って下さい。しんどくてもきっと誰かが必ず助けてくれます。私は直接助けることは出来ませんが、そんな皆さんを心から応援しております。頑張れ、フレッシュマン!!

お別れの季節に思うこと

 米子市内の桜も満開です。明日から4月で新しい年度のスタートです。私も開業医になってから1年がたちます。医院のスタッフが新年度で変わる訳ではありませんが、出入りされる製薬会社さんや医療機器メーカーさんの営業の方、また場合によっては患者さんも転勤などでお別れになることがありますので、寂しさを感じることもあります。勤務医時代、言われてつらかった言葉の一つが『先生、最期まで診てくださいね』と患者さん本人、またはその家族から不意に言われることでした。患者さんが私に気を使って頂いての発言であったとしても、そういわれることは非常に光栄なことです。ただし私のように大学の医局(私なら鳥取大学医学部病態情報内科学講座:旧第一内科で循環器内科と内分泌代謝科が含まれます)というものに入局している者にとっては、基本的には医局の人事で勤務先、転勤先が決まりますので、私の意向だけではその病院に留まることは出来ないのです。

 更に実家が開業医であったこともあり、勤務医時代に出会った患者さんをずっと今後も診ていく、というのは実際には約束できませんでしたし、その患者さんには何て言っていいのか、苦笑いを浮かべながら何も言うことは出来ませんでした。開業してよかったことの一つは、その悩みから解放され、今後患者さんとは長いお付き合いができることです。その分勤務医時代とは異なる責任の重さも感じます。訪問診療で終末期の患者さんを診させて頂くことがありますが、勤務医時代の時のように学会などの出張の際に代理の先生にお願いしたり、当直の先生に初期対応して頂いたり、なんてことはもう出来ません。逆に『先生、最期まで診てくださいね』と今言われたら、苦笑いを浮かべることもなく、『私でよければ、よろしくお願いしますね』とはっきりと言うことができます。

 一年たって、新年度になって、何か特別な変化が今のところある訳ではありません。ただ患者さんにもっともっと満足して頂けるよう努力に励みたいと思っております。今後ともよろしくお願いします。

 

 

 

不来方のお城

 不来方(こずかた)の お城の草に 寝ころびて  空に吸はれし 十五の心

 大学時代を岩手県の県庁所在地である盛岡で過ごした私は、東北新幹線で盛岡に初めて到着した日にまず不来方のお城があった盛岡城跡公園(岩手公園)を歩きました。この歌を中学生の時に読んで、盛岡に行くまでは石川啄木の純朴にも感じられる作品に敬愛の念を抱いておりました。寝ころびこそはしなかったものの、季節外れの春の雪が降り積もる公園内をゆっくり雪を踏みしめながら散歩したことを昨日のことのように覚えています。しかしその後、大学の文学の講義などで啄木の人物像を段々と知るうちに、ブログに書くことも憚れるような倫理的にはかなりアウトな人物であることを知り、イメージが全く変わりショックを受けた覚えがあります。

 先日行われましたWBCでは岩手県出身の大谷翔平、佐々木朗希両選手が大活躍しました。まるで漫画のようなストーリー。米国との決勝戦の最終回、大谷とトラウトの対戦は、医院の待合室のテレビで患者さんやスタッフのみんなと観て、最後大喜びしました。医院が暇なことがバレますが、これはたまたまということです…。。今岩手にいたら盛り上がってるんだろうな、と思いながら久々に岩手や盛岡のことを思い出していました。佐々木選手の郷里である陸前高田市に関しては大学3年生の地域医療実習で県立高田病院でお世話になり、震災後に佐々木選手が過ごした大船渡には、近隣に五葉山という低山ではありますが有名な山があり、私も好きで何回も登ったことがある、どちらも思い出深い街です。これは私だけの意見かもしれませんが、大谷、佐々木両選手とも私が思う岩手らしい人物像そのものです。朴訥で多くを語らず、温厚で、物事に真面目に取り組む…。無論みんなそんな人間ばかりではありませんが、ただこれは我々、鳥取県人の人物像ともかぶります。私のように社交性のない、まったくよそ者が岩手で何とか6年間生活出来たのも、そういった似通った土地の人柄もあったのかもしれません。

 昨日の日本海新聞に住吉小学校のスポーツ少年団野球部に7人しか部員がいないことがニュースになっていました。住吉小学校は米子市内でも比較的生徒数の多い小学校で、このニュースには私も驚かされました。私が小学生の頃、隣の義方小学校は今の住吉小学校とさほど変わらない生徒数だったと思いますが、同校にスポーツ少年団の野球部が複数個存在していましたし、どうも少子化だけの問題ではないようです。19日には春の選抜高校野球の初戦で鳥取城北高校が愛知県の東邦高校に惜しくも負け、WBCとは反対に県内の野球には明るい話題が今のところあまりないようです。

 岩手県では最近は大谷翔平選手の母校である花巻東高校や盛岡大学付属高校などが全国でも話題になるような強豪校になり、最近プロ野球選手も多数輩出しています。ただ大谷選手の生まれた奥州市(旧・水沢市)、佐々木選手が過ごした大船渡市も決して元々特別野球がさかんな地域ではありませんし、一時期岩手県の高校野球も一回戦もなかなか勝てない時期が続いた時がありました。鳥取県だから出来ない、ということは決してないと信じています。私のようなものに出来ることは地域の選手やチームに関心を持ち応援することだけですが、こういった些細なことも地域スポーツにとって大事ではないかと最近思ってます。今後鳥取からも世界に活躍できる選手、全国で勝てるチームがいつか出てくることを楽しみにしてます。

 

 

 

興味

 そんなに多くはないですが、最近このブログを『読んでいますよ』と言われることがあります。せっかくホームページを作ったのに全然更新しないのもどうかと考えて始めたブログではありますが、読まれていないことを前提でほとんど思いつくままに書いております。気を付けていることといえば、あまり不謹慎にならないように、そこだけは注意しています。ただ本来趣味が少なく教養の浅い人間ですので、ブログの題材がないことに最近気づいてきました。車、服、グルメ、家電…など本当に心の底から興味がないことが多く、あふれ出るような教養もありませんので、段々と書いていると本当に薄っぺらい、他人から見たらつまらない人間であることを改めて自覚しています。

 問診の大切さというのは以前も書いたことがありますが、問診の際に現在の職業や仕事内容、家族構成に関しても尋ねることがあります。これは特に心臓の病気に関しては非常に大事になることがあります。例えば50代の男性が『仕事中に息が切れる、胸が痛い』という訴えで受診されるとします。この男性が事務系の仕事なのか、何十キロの荷物を運ぶ運搬の仕事なのかで全く話しが違います。事務系の仕事であれば日常生活レベルの動作で症状が出ていることになりますので、もし心臓の病気であれば緊急性が高いことになります。一方運搬の仕事の方でいえば、病気の重症度によっては仕事内容を継続すべきかどうかの問題になってきます。家族構成に関しても独居なのか、独居でなければ家事を誰が行っているのか、本人の今後の生活を考える上で非常に重要です。また高齢の方であれば、家の間取りもある程度大事で、玄関先に段差はあるのか、ベットからトイレは近いのか、自宅の二階に行くことはあるのか、など結構踏み込んだことも聞く場合がありますが、これは生活指導や教育、介護サービスなどの介入という点では必須の内容になります。

 ただし忘れてはいけないのは、プライバシーの問題です。人によってはかなり立ち入ったことを聞かれるので不快感を感じる方もおられるでしょうし、家族関係が複雑な場合などは特に、ある程度線引きをして踏み込むラインを決めなくてはいけません。病気の話しだからということを理由に、何でもかんでも聞く訳にはいかないのです。また個人情報の流出といった点にも注意しなくてはいけませんので、自宅などで仕事の内容をほとんどしゃべることはありません。そういった注意点はあるものの、単に病気だけを診るのでなく、バックグランドを含めたその人自身を診るということは心臓の病気であったり、糖尿病であったりの診療の醍醐味のように感じています。職業的な意味として、他人に興味がないと出来ない仕事だと個人的には思っています。

 あくまでも職業としてで、普段から世間一般の人の観察をしている訳ではありません。休みの日は部屋にこもって、ただただ本を読んだり、YouTubeを見たりの陰キャの代表です。ただ数年たって、サングラスをかけて高級車を運転してみたり、都内の高級外資系ホテルで会食している写真を調子に乗ってブログにアップし始めたら、『お前、昔はこんなこと書いてたぞ』ということでこのブログの内容を私に見せてやってください。まずそうなることはなさそうですが。

 

 

ご迷惑をおかけしました

 一般診療の休診で皆様に大変ご迷惑をおかけしました。3月6日からは通常通りの診療体制に戻ります。時間がたつのは早いもので、もう3月。皆さんには信じられないかもしれませんが、まだこの年齢になっても受験生の気分が完全に消えないもので、先日は日本海新聞に掲載された鳥取大学の前期試験の問題にも思わずペンを持って挑戦していました。まあ、数学に関しては全くといっていいほど解けませんでしたが。この時期になると毎年なんとなく気持ちがそわそわして落ち着きません。ただでさえ落ち着きがない人間なのに…。といっても診療には全く影響はございませんので、皆さん安心して受診してください。来週からまたよろしくお願いします。

一般診療の休診のお知らせ

『お知らせ』でもお伝えしましたが、3月4日(土曜日)まで諸事情にて一般診療は休診とさせて頂きます。尚、診療時間内は通常通り医院は開いておりますので、お薬の処方や臨時の点滴などに関しては対応しております。休日、夜間などの電話相談に関しても今まで通り対応いたします。

現状では3月6日(月曜日)から一般診療を再開する予定です。

突然のことでご迷惑をおかけまして誠に申し訳ございません。何卒ご了承くださいませ。

 

医療法人社団山田内科医院  院長

名前を考える

 私は『健作』という名前ですが、子供の頃は改名できないか悩むくらい嫌いな名前でした。よくクラスメートから『抜作』と呼ばれることがあり、それをたまたま聞いた小学校の担任の先生が終わりの会で議題として取り上げ、先生が『山田は抜作なんかじゃない。○○(呼んだクラスメートの名前)、お前の方が抜作だ』などの発言を聞き、子供心に更に傷ついた覚えがあります(担任の先生はよかれと思って言って頂いたと思いますが)。また森田健作の代表曲『さらば涙と言おう』を歌いながら毎回私に近づいてくる剣道部の顧問の先生がおられ、自分もどうリアクションをとっていいか分からず、それにも悩むこともありました。『山田』という苗字も含めて古臭い感じがしましたし、今でいうところのキラキラネームにあこがれてた時期もありました。ちなみに私の名前の由来は父方の祖父が『山田知作』で、私の名前に『作』の一字を入れることは決定していたようですが、その後『一作』『八作』など個性的な名前がライバル候補として挙がる中、最終的に『健作』に決定したと聞いております。

 先週末に『第6回勤労者医療フォーラム』という会をWEBで聴講していました。副題は『糖尿病医療における障害(スティグマ)とアドボカシー』でした。スティグマ(Stigma)とは恥・不信用のしるし、不名誉な烙印という意味で、いわれのない差別や偏見の対象となることです。『糖尿病の患者さんは食べ過ぎである』『自己管理ができない』『生活習慣が乱れている』というレッテルが張られ、実際に糖尿病患者さんが生命保険に加入できない、住宅ローンを組めない、就職ができない、などといった不利益な事態を被る事例が出ています。糖尿病に関しては本人の生活習慣だけで発症するものではなく、遺伝的な要因などもあり、血糖コントロールの悪化も含めて自己管理の影響だけではありません。糖尿病に関しては色々な合併症を起こす、また並存症のある病気ではありますが、昔のイメージで『不治の病』『寿命が10年短くなる』などと間違った糖尿病のイメージがまだ残っていることがあります。しかし糖尿病の治療と予後は以前に比べて大きく改善しており、糖尿病の患者さんの状況も昔と変わっております。アドボカシー(advocacy)とは、こういった糖尿病の患者さんの権利を守り,社会的地位を回復させる活動を指しています。

 昨年11月に糖尿病の名称変更の話題がニュースでも取り上げられました(糖尿病の病名変更を提唱へ“不正確でイメージ悪い”専門医団体 | NHK | 医療・健康) 糖尿病は英語でdiabetesと言いますが、diabetesに尿から糖が出るという意味はありません。血糖が高いと尿に糖が出ることはありますが(尿糖)、これが糖尿病の病気の本質を表してはいません。『尿』ということばから不潔なイメージで見られるなどとして、多くの患者さんは抵抗感、不快感を感じております。病名に対して負のイメージを持つことが患者さんの生活や治療などにも影響が出る可能性もあります。病名の変更は特に珍しいことではありません。『痴呆症』が『認知症』に、『精神分裂病』が『統合失調症』に、『成人病』が『生活習慣病』に変わり、疾患のイメージは若干変わりました。しかし生活習慣病こそ生活習慣で予防できないものも含まれ(糖尿病も含まれます)、この名称こそ変更すべきという意見もあります。

 私の名前の話しに戻りますが、今ではこの『健作』という名前は気に入ってます。下の名前で覚えてくれる方がおられますし、普段色んな方にお会いしますので、下の名前でも覚えて頂くのは非常に有難いことです。名前というのは段々と人間になじんでいきますが、病気の名前もなじんでいっても、それで苦しむ人がいるのであれば名称は変更は検討してもよいと思います。糖尿病という言葉があまりに浸透しているため困難なことだとは思いますが、変更するのであれば大半の方が納得される、また今後の糖尿病患者さんのアドボカシー活動の支えとなるような名前を期待したいです。

これから

開業医になってからもうすぐ1年になります。新しい医院に移ってからは、本当に早く時間が去っていくような感じがします。主に診療のことばかり考えていた勤務医の時代と変わり、当然ながら経営のことも気にしなければなりません。勤務医時代なら外来や救急外来の日直、当直で暇なら、『今日は意外と平和ですね』と喜んで病棟に上がって別の仕事をしてましたが、開業医になると正直そういう日ばかりでは困ります。また今まで聞いたことない手続きや見たことがない書類作成など慣れないことの連続で、なかなかこれが難しいところです。

2023年5月8日から新型コロナウィルス感染症が5類感染症に変更するという報道が出ています。といってもコロナ感染症の患者さんの診察、治療、点滴などは当院でも今まで行ってきましたし、5類になったので新規の発熱患者さんが、一般の患者さんに混じって待合いに座って待つ、ということも少なくとも今すぐにはない話しです。今後も発熱患者さんと定期受診の患者さんは分けて対応を行うことで外来を維持していくと考えていますので、医院としてはさほどやることは変わりなさそうです。ただ一般病院ではインフルエンザ同様、感染者は隔離した部屋で入院することになると思いますので、入院出来る場所を確保すること(ベットコントロール)はより大変になることが予想されますし、新型コロナウィルス感染症に感染した医療者がそのまま働いてもよいということもおそらくないでしょうから、今まで通り医療スタッフの確保も大変だと思います。

自分が一番懸念しているのは2類感染症において新型コロナ感染者の入院調整は保健所が主に行ってきましたが、5類になれば今度は医療者が入院が必要な患者さんの紹介先を探すことが予想され、入院可能な病院を探すのに難渋する可能性が高くなることです。あとはワクチン、治療薬などの公費負担がいつまで続くのかの問題もありますが、ただこれも含めてしばらくしてみないと分からないところではあります。

5月以降はどんな生活になっているのか、想像がつかない点もありますが、今後はもう少し自分なりに診療に特色を出して頑張ってみたいと思っています。具体的にはそれは何か、と具体的に書くと有言不実行男に終わりそうですのでまだ書かないでおきます。どうぞお楽しみに。

冬は暖かく

昔から季節感がない男、とよく言われております。冬でもTシャツ一枚が多いですし、外出時もTシャツ一枚か、世間体を気にしてその上にダウンジャケットを羽織っていくだけです。寒いのが大丈夫というよりは、長袖があまり好きではないので、セーターは数年着たことがありません。部屋の中でも厚着で暑くなるのが嫌いで、普段から軽装です。ただ訪問診療に出かけたある日のこと、患者さん宅のベットの横に貼り紙があり、おそらくヘルパーさんの私への気遣いでしょうか、『山田先生が寒いので必ず暖房をしてあげて下さい』という患者さん宛てのメモを見た時、さすがに申し訳なく感じましたが… 最近は訪日外国人、特に欧米人が東京や京都の街を冬でもTシャツ一枚で観光している姿を見て、『やっと俺の仲間が増えた』と少し喜んでおります生粋の米子人であります。

冬になると心疾患や脳血管疾患の患者さんが増えます。私が一応専門としている心不全の患者さんが増加する原因に関していえば、寒冷による血管収縮(血圧上昇)、塩分過多(鍋など食事内容の変化)、肺炎などの感染症の増加などが挙げられます。

上記は厚生労働省の主な死因でみた月別の死亡指数のグラフをみていますが、男女とも悪性新生物(がん、肉腫)を除くとUの字になっており、冬季になると心疾患、脳血管疾患の死亡が増えることが分かります。多分こういったデータをみると、雪や寒さが厳しい北海道や東北地方は大変だろうと想像される方も多いのではないかと思います。しかし実際には冬が厳しい地域だけで死亡率が上昇する訳ではないということを取り上げたのが、先日の1月17日に放送されたNHKの『クローズアップ現代』でした。

上の図はNHKの『クローズアップ現代』のホームページからの抜粋になります。これでみますと北海道の冬の死亡増加率は10.3%に対して、鳥取県は19.1%と明らかに多いのです。鳥取県に限らず増加率が高い地域には北関東、四国、九州など、冬も温暖とされる地域も多く含まれています。温暖な地域が北海道より有意に死亡率が高い理由に関しては、以前より室温が注目されています。北海道の冬のリビングの平均室温が19.8℃に対して、鳥取県の平均室温は15.6℃と4℃以上も低い結果になっています。これは北海道の皆さんが暖房などしっかりかけているというよりは、北海道を含めた冬の寒さが厳しい地域においては断熱など寒冷に対して十分な対策をされた住居に住まれていることが原因として考えられています。

番組では断熱改修の提案や窓にカーテンを付ける工夫などが紹介されてました。しかし実際に訪問診療をしておりますと皆さん厚着や電気毛布などはされておりますが、暖房やストーブそのものをまずしていないご家庭、特に独居の方が多いことに気付きます。電気代の高騰や二酸化炭素の排出削減の問題などありますが、まずは暖房をちゃんとつけることを特にご高齢の方には提案したいと思います。Tシャツ一枚男の話しに説得力はあまりありませんが。

 

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