けんさく先生の日記

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2023.09.24

ワクチンの話し② 帯状疱疹ワクチンについて

 外来をしていますと、意外と帯状疱疹の患者さんに出会う確率は結構高いものです。いわゆるコロナ禍において帯状疱疹の患者さんの数が増加しましたが、それに関しては新型コロナ感染により、免疫細胞やその働きがダメージを受けることや、コロナ禍の心理的ストレスにより、免疫力が低下したことが原因として考えられています(JAMA Intern Med. 20211819):1243―5)新型コロナワクチン接種などによる影響で帯状疱疹が増えるのでは?という報告が一部散見され、ネットなどでも話題になりましたが、結果的に明らかにこの因果関係を裏付けるデータは今のところ示されておりません( 2022 Nov; 5(11): e2242240.)

 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウィルスに感染することで生じます。初感染時は水痘(水ぼうそう)を小児期に好発しますが、その後もウィルスは感染後終生にわたり主として脊髄の後根神経節というところに潜伏し、加齢や免疫低下などにより再活性し、帯状疱疹として発症します。約2/3は胸腹部などの体幹部に皮膚の症状が出現することから、米子でもそうですが一部の地域では『胴巻き』と呼ばれています。鼻の周囲や耳に生じる場合は重篤な合併症を生じる場合があり、そのような際は皮膚科や耳鼻咽喉科に紹介させて頂いてます。帯状疱疹は、約3人に1人が一生のうちに1度以上経験するとされています。通常は痛みやかゆみを伴う皮膚の症状が生じ、その後かさぶたとなって皮膚症状は治癒し、同時に痛みも治まっていくことが多いです。しかし皮膚症状が改善しても痛みの症状が3カ月以上残存する帯状疱疹後神経痛postherpetic neuralgiaPHN)といって激しい痛みを自覚されることがあり、患者さんも我々も治療や対応に困らされることを何度も経験しました。

 帯状疱疹の予防ワクチンとして以前より生ワクチン(ウィルスを弱毒化したもの)があります。有効性としては発症を51.3%減少、帯状疱疹後神経痛を66.5%減少させる(NEJM;352:2271-2284,2005)ものの、効果としては多少不十分でその効果が5年程度しかないことが問題でした。最近は世界初の組換えサブユニットワクチン(生ワクチンではない)であるシングリックス®が注目を集めています。国際共同第Ⅲ相試験では50歳以上で97.2%、70歳以上で91.3%、4年目の有効率は93.1%で、帯状疱疹後神経痛も有意に減少することが報告され(Lal H. et al.: N Engl J Med. 372(22), 2087-2096, 2015)、米国では帯状疱疹予防はシングリックス®のみが推奨対象となっております。また最近では平均9.6年の長期追跡調査試験も報告され、有効性の持続が示されました(Strezova A. et al.: Open Forum Infect Dis. 9(10) Oct 2022; ofac485,)

 現在、50歳以上の方、又は帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方を対象にシングリックス®の予防接種を当院でも行っております。ワクチンの筋肉注射を行い2カ月あけて、もう1回同じものを接種し(計2回)、その後の追加接種は現状では必要ありません。ワクチンを受けられる方の中にはCMやパンフレットを見た方に加え、家族が帯状疱疹後神経痛を発症し、そのつらさを間近で介護などで目の当たりにされて希望されるかたも今まで数人おられました。ただしこのワクチンを誰でもどうぞ、とはなりません。理由のひとつは副反応で、局所の痛み・腫れ、発熱、倦怠感などの頻度が比較的高いことです。ただしこれは長くても2‐3日程度でおさまるのが通常ですので、それが許容できる方は問題ありません。もう一つの理由は金額です。現在は鳥取県西部では日野町、江府町は公費助成をを行っておりますが、現在それ以外の市町村では行っておりません。ワクチンは保険診療ではありませんので、米子市にお住まいですと1回2万2千円程度で計2回で約4万4千円のお金がかかります。決して安いとは言えない価格ではありますが、帯状疱疹を予防できるのであれば十分打つ価値はあると考えます。ご不明な点などございましたら、診療の際などにでもお気軽にお尋ねください。

 

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