けんさく先生の日記

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2023.04.30

ワクチンの話し① エビータと子宮頸がん予防(HPV)ワクチン

 マドンナ主演のミュージカル映画『エビータ』は1996年にアメリカで公開されました。アルゼンチンのフアン・ペロンの大統領夫人となった『エビータ』ことエバ・ペロンの半生を描いた人気ミュージカルの映画化で、ミュージカルに関しては日本では劇団四季が公演しています。私は普段ミュージカルは観ないのですが、劇中のマドンナの歌、『Don’t Cry For Me Argentina』があまりにも聞きたくてその当時映画館に足を運んだ記憶があります。現在でもアルゼンチン国内でのエビータの人気が強いため、映画作成の段階でマドンナの主演、また演出等に対して国内から拒否的な意見が強く、アルゼンチンでのロケの際に制作反対のデモが行われたことが当時日本のマスコミにも報道されました。アカデミー賞では多部門でノミネートされましたが、受賞したのは歌曲賞のみでした。これに関しては夫であるフアン・ペロンがムッソリーニの信奉者で、ユダヤ系の力が強いアメリカ映画界があまり評価しなかったというのが通説となっているようです。

 そのエビータことエバ・ペロンは34歳の若さで亡くなります。死因は子宮頸がんでした。子宮頸がんに関しては日本でも若い世代の女性がかかる癌の中で多くを占めており、年間日本でも約2900人の女性が亡くなっており、これは増加傾向にあります。また癌の治療のため子宮の機能を失うことによって妊娠が出来なくなる若い年代の女性もいますので、少子化という側面で考えても子宮頸がんの予防は非常に大きな問題です。子宮頸がんのほとんどが性交渉によってヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが子宮頚部細胞に感染することによって発生することが知られております。子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)はHPV感染を予防することで、子宮頸がんを予防するワクチンで安全性、有効性が世界で広く認められたワクチンです。

 日本では2013年4月に小学6年生から高校1年生を対象にHPVワクチン接種が定期接種となった時期がありました。しかしHPVワクチン接種後に発生した多様な症状に関して繰り返しテレビ、新聞などで報道され、同年6月に厚生労働省はHPVワクチンの『積極的な接種勧奨の差し控え』の発表を行い、結果的にほぼ停止状態になりました。当時私も症状が出た女子学生のドキュメンタリー動画をテレビで見て、かなり衝撃を受けた覚えがあります。しかしその後、HPVワクチン接種者とワクチンを打っていない非接種者の両者において、報道されたような多様な症状に関して頻度は少ないものの両者に出現し、その発生頻度は統計的に有意な差が認めなかったことなど、必ずしもワクチン接種に固有の副反応の症状でないことが報告されました(Papillomavirus Res 2018,5:96-103、『名古屋スタディ』)。

 そういった結果が出る以前より厚生労働省の専門家により調査や検討が行われ、諸外国のデータも加え結果的に接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが認められ、『積極的勧奨の再開を妨げる要素はない』との結論が出されため、積極的勧奨の再開となりました。2023年4月からは広いHPV型をカバーする9価ワクチンが定期接種として使用可能となっており、『積極的な接種勧奨の差し控え』で接種機会を逃した方へのいわゆる『キャッチアップ接種』も9価ワクチンが使用可能となっております。

 長々と書きましたが、先進国の中では極端に低い接種率(というよりほぼ打ってない。先進国で日本と同じくらい接種率が低いのはシンガポールくらい)でなおかつ子宮頸がんの死亡率が増えている現状は日本の社会問題と考えます。もちろん、どのワクチンに関しても重篤な副反応が低い確率ではありますが一定の割合で起こりますので、打つ打たないは個人、または家族の意思決定で、それは尊重されるべきです。しかし過度な『負の情報』によって副反応に対する懸念が強いように思われます。まずはワクチンの効果よりは子宮頸がんに対して理解されることも重要かもしれません。当院は内科ではありますが、お子さん、お孫さん世代で接種を迷われている方がおられましたら、当院でお尋ねください。接種の予約も当院で承っております。

※②は帯状疱疹ワクチンについて、です。

 

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