プロフェッショナル

 鳥取大学勤務時代に第一内科(病態情報内科学講座)の循環器内科のホームページ作成の係を担当していたことがあります。その当時はまだ科としてのホームページがない時代でしたので、とりあえず他の大学がどんなホームページを作っているのか、日本の全ての大学の循環器内科のホームページを閲覧してみました。その際、今は教授を退官されておりますが、山口大学器官病態内科学の松崎益徳前教授が医学生、新人医師に向けて書かれた医師の心構えを説いた挨拶文(医局への勧誘を兼ねた内容だったと思います)を読み、当時私は非常に感銘を受けたことを覚えています。その部分をプリントスクリーンをして、大事にファイルに保管していたのですが、境港の済生会に転勤した際にどこに保管したか分からなくなり、今となっては非常に後悔しております。その内容で特に印象に残っている言葉は、目の前の患者さんは『しゃべるプロ』でも『聞くプロ』でも何でもない、ということです。私にとっては非常に大事にしている言葉で今回取り上げさせていただきましたが、要旨が異なっていますと松崎先生に大変失礼になりますので、松崎先生へのオマージュとして最近私の思っていることもつけ加えて私見として述べさせて頂きます。

 患者さんから『下痢で受診したい』とのことで連絡あり、診察室に入って話しをよく聞いてみると、実は下痢はそんなに大したことはなくて、昨日からの喉の痛みと発熱で実は新型コロナウィルスに感染したのが心配したので来院しました…あくまでも一例ですが、こういうことは決して珍しくありません。『主訴』、患者さんの症状のうち最も主要なものですが、これが話しの中ではっきりしない場合もありますし、昨日からの症状の話しをしているところにその症状と関係ない3ヶ月くらい前の話しに移ったりすることもあります。患者さんは自分の考えている通りにうまく決して話してくれませんし、聞くごとに話す内容が変わることもよくあります。患者さんの訴えや病状の経過を本当にきっちりまとめるのは意外と大変なことです。ただこれは『こんな患者さんもいます』ということではなく、松崎先生の言葉を借りますと患者さんは決して『しゃべるプロ』ではないのだから、うまく話せないことを前提でしっかり患者さんの訴えに耳を傾けなさい、ということなのです。

 外来では減塩であったり、心不全患者さんの体重測定などのセルフモニタリングなど毎回重要性を説明することがあります。患者さんからは『また同じこと言っている』『前回も聞いたよ』と心の中で思っておられる方もおられるでしょう。無論小生の『ど忘れ』の場合もありますが、多くはあえて繰り返していることが多いです。勤務医時代に今後の方針(多くは退院先など方向性に関しての話し)について家族を集めてお話しすることがよくありました。約30分程度、紙やタブレットを用いてソーシャル・ワーカーの方や看護師さんも交えて説明し、御返事は来院していない他の家族とも相談して、後日返事を頂くことがあります。しかし再度来院頂き話をしてみますと、最初の説明の段階のほぼ振り出しに戻っていることもよくある話しです。ここに関しては私の説明の拙さにも原因あると思います。ただこれはどんなにうまく説明したとしても一度の話しで全部理解して頂いているとは私は思っていません。失礼な表現かもしれませんが中学・高校時代でも自動車学校でも、先生の授業を聞くだけで授業内容をテストして、クラス全員がテストで満点とれるのかというと、そんなことはまずないと思います。一度話しをして、その内容の半分くらい理解してくれたらよい、そんな気持ちで説明をしております。逆を言えば、相手に十分理解頂くには複数回説明を重ねる必要も時として出てくると考えています。

 患者さんとの問診や説明がうまく行かない時に、正直に申しますとイライラするような気持ちが出てくることがあります。その時にはいつも、患者さんは『しゃべるプロ』でも『聞くプロ』でも何でもない、あの言葉を思い出してます。それが実行出来ているかは自己評価としてはまだまだですが、いつかは自分が『説明のプロ』、『聞き出すプロ』になれるように今日も日常診療頑張りたいと思います。

 

 

 

臥薪嘗胆

『先生な、人生は臥薪嘗胆や。そういう気持ちが常にないとあかんねん。くやしい気持ちを忘れんで努力重ねんとダメなんや』

 違う科の先生ですが、病院に勤務している際にICUで私に唐突に言われたことがあります。言われた時は『なんでそんなこと言うんだろうか。もしかして俺、よっぽど今まずいことしたのかな?』と自分の行動を振り返ってみましたが特に該当することがなく(他人から見ればたくさんあったかもしれませんが)、その数か月後、たまたま酒の席で違う先生に同じことを言われているを聞いて、その先生の口癖で、普段から本当に思っていることだと知ってなんだか安心した覚えがあります。『臥薪嘗胆』というと、自分のような陰湿な人間にこそしっくり来る言葉と思っておりましたが、その先生は非常に豪快でみんなから慕われている先生で、発言が自分の印象とは全くマッチしてなくて、とても意外でした。

 昨日サッカー・ワールドカップの日本対ドイツの試合を見て、私も含めてたくさんの人がテレビの前で日本の逆転勝利に歓喜したと思います。遠藤選手、伊東選手、板倉選手、途中出場の三苫選手、冨安選手らのプレーは非常に印象に残りましたが、私にとって一番印象に残ったのは点を決めた堂安選手、浅野選手の2人です。点を決めたから印象に残るのは当たり前かもしれませんが、この2人に関してはその歓喜の場面に行きつくまでの道のりが順調で平坦はなかったことが理由です。

 2人とも若くして欧州リーグで活躍されていますが、日本代表で常に順風満帆に活躍してきた訳ではありませんでした。堂安選手に関しては今回のアジア最終予選では途中招集メンバーから外されてましたし、浅野選手も前回大会では代表から落選、今回の大会もケガで代表選出に対して疑問視する報道が多かったように思います。二人とも期待されながらも今回の日本代表の顔、では決してなかったのではないでしょうか。しかし2人の試合後のインタビューを聞くと、共通して自分の強い思いを語っており、またそれがプレーにも前面に出ていたと思います。そこで前述した『臥薪嘗胆』を思い出した訳です。

 自分も頑張らきゃいけませんね。刺激されました。やるべきこともたくさんあるし、テレビでサッカーばかり見てる場合じゃない!(コスタリカ戦までは、ですけど)。

仁和寺にある法師

仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ…

 吉田兼好の徒然草にある一節で、学校の教科書にも出てくる有名なお話でご存じの方も多いと思います。京都の仁和寺にいた僧侶が念願の石清水八幡宮を拝みに一人で行ったところ、そのふもとの極楽寺、高良だけを参拝し、山の上に向かう人がいる(本当は山の上に石清水八幡宮がある)と気づいていながらも、これだけだと勘違いして実際の石清水八幡宮には参らず帰ってきたお話しです。最後に『すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり(ちょっとしたことでも、その道の先導者はあってほしいものである)』ということで文章を結んでいます。

 医院をやっていると新しい試みを始めることがたくさん出てきます。不明な点に関しては本やネットなどでまずは調べますが、それでも分からないことが多く、『先達』に教えを乞いたいことはいくらでもあります。実際その『先達』が誰かさえもわからず、結果的にはなんとか自分たちで勉強して試行錯誤やってることも多々あります。怖いのは少し変だと思いながらも、出来たと思っていたことが実際には完了、完成していない、それに気付かずに『石清水八幡宮をお参りした』と勘違いしてしまうことです。ほとんどそういうことはないと思いますが、ただ全くの新規のことに挑戦するとなると注意深く考える必要があります。

 最近当院は木曜日の午後などの休診時間を利用して、騒音職場の騒音検診、振動工具使用者の振動障害などの特殊検診を行っております。特に振動障害の検診は珍しい検査で、この機械置いている施設は一般開業医ではさすがに珍しいと思います。私も検査どころか購入するまで機械そのものを見たこと自体一度もなく、YouTubeなど動画もないか検索しましたが、さすがに『振動障害の検査の仕方』といったような動画はありませんでした(例えあっても再生回数は稼げそうになさそうですね)。いろいろと資料など購入しましたが、今ひとつわかりませんでした。

↑オージオメータです。気導聴力は250〜8000Hzままで測定可能です。

↑ 振動感覚計です。指先の振動覚を測定します。

↑皮膚表面温度計です。皮膚表面温度が瞬時に測定可能です。

 

 今回全く分からないところを、たまたま講習会で質問させて頂き、丁寧にご回答頂きました黒沢洋一先生ありがとうございました。なんとかこなせました。『先達』になって頂き、大変助かりました。

 尚、特殊検診などが必要な企業の方などおられましたら、当院にご連絡頂ければ幸いです(振動障害の検査は保険適応の検査ではありませんので、残念ながら一般診療には十分生かせそうにないです。)

 

それは大事

 寒くなるとなぜか学生時代のことを思い出しますが、よく思い出すの大学時代の国家試験前の時期です。医学部は6年間ありまして、5、6年生は病院での臨床実習が中心ですが、6年生でも座学で講義を受ける機会があり、それが公衆衛生学という講義でした。各大学で勉強する時期やカリキュラムは異なるかもしれませんが、医師国家試験では非常に出題される割合が高い分野でしっかり勉強してました。

 公衆衛生学とは簡単に述べますと、病気を予防して、健康を保持するための社会活動や研究を行う学問です。医療の統計、または介護保険や医療保険制度といった社会保障制度などのシステムや簡単な法律を学ぶ分野もありますし、産業保健、環境保健といって、人間に与える有害な物質や疾患など学ぶ分野もあります。ただ私にとってはほぼ暗記の項目ばかりで非常に苦手な分野でした。尿中馬尿酸、尿中メチル馬尿酸、尿中マンデル酸…(それぞれ有機溶剤の代謝産物の名称です)、こんなの医者になっても役に立たんだろ、と思いながらも試験には出るので嫌々勉強しておりました。

 しかし嫌々勉強していた項目のデータや検査内容を、現在(一応)産業医として向き合い、勉強しております。先日たまたま今井書店で学生用の公衆衛生学の参考書を見つけ、すぐに購読し毎日のように読んでます。家族からはもう一度国家試験でも受けるのか、と馬鹿にされていますが。この本だけで内容を全部網羅出来るほど甘くありませんが、知識の整理が出来ることに加え、多少懐かしさも感じながら重宝してます。人生に無駄なことはない、とまで大きなことは言いませんが、そう思う気持ちがいつも大事なのかもしれません。

 

アーニャと一休さんからのお知らせ

 『往診行っている間にホワイトボードに絵でも書いて』、とほぼ冗談でアーニャと一休さんの絵を指定して職員さんに描くようにお願いしたら、短時間で(当然休憩時間中です)ボードマーカーで書かれたので非常にびっくりしました。絵がうまいって全然知らなかったです。人の絵の才能にはなかなか気づく機会がないものですね。『お笑いマンガ道場』でも車だん吉や川島なお美も意外と絵うまかったですしね。もし山田内科やめて漫画家になります、って言われもここは諦めるしかないかもしれません。ということで、今月から12月まで平日の午後3時‐4時頃まで会社健診を院内で行っており、一般の患者さんには待って頂くこともございます。ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承ください。

2階はこうなってます

『住むにしては少し小さくないですか?』

 内覧会を開いた際に、2階は住居だと思われていた方もおられたようですが、2階は自分達スタッフの控室になってます。ちなみに自分の院長室はこうなってます。

 家具が全て揃ってないですし、家具の位置もまだこれが定位置ではないのですが、非常に落ち着いた感じでとても自分の部屋っぽくないです。ただし

これだけの荷物がまだ院長室に入る予定です。ちなみに段ボールの中はほぼ全て医学書で、現在は旗ヶ崎の自宅内に保管中です。まだ更に自家用車に段ボール数箱入ってますので、今後院長室が散乱すること間違いないのです。乱れる前に写真におさめてみました。ただ段ボールの中に半年いれたままで診療出来るのだから、段ボールの中はほとんど不要な医学書ばかりだと家族からの厳しい指摘があります。いろいろと反論したいところですが、確かにその通りかもしれませんね…断捨離、と表現すると不要な本の存在を認めたことになりますが、それも手段の一つかもしれません。いずれにせよ荷物移動後の筋肉痛が思いやられます。

たくさんのお祝いありがとうございました

 新医院での初日が終わりました。たくさんのお祝いを皆様から頂きまして本当にありがとうございました。まるでお花屋さんのように、花に囲まれております。掲載した写真の花はごく一部で、本当にたくさんの方に祝って頂きました。

 テレビの話しです。ちょうど私が医師国家試験が終わり、研修医になる直前の2004年3月だったと思います。久米宏が『ニュースステーション』を降板する日のエンディングに、『歴代含めたスタッフだけではなく、提供してくれるスポンサーとその従業員、またその商品やサービスを買ってくれた消費者も広い意味では番組の関係者で、番組に携わってくれた人の数は何千万人という単位になるのでないか』という主旨のことを発言し、関係者、視聴者に感謝の言葉を述べていたことが印象的で記憶に残っています(その後、久米宏は自分へのご褒美として自ら入れたコップのビールを一気に飲み干して、番組は18年半の歴史に幕を閉じました)。規模こそ違えど、うちのような小さな医院でも同様です。数え切れない方々に携わって頂いて、今日にたどり着きました。関係者の皆様や通院して頂いている皆様の期待に応えれますよう、一層頑張っていく所存です。

診察時間

OFFICE HOURS
診察時間 日祝
8:30 - 12:30 -
14:00 - 18:00 - - -

※日・祝、木曜・土曜午後休診

アクセス

ACCESS

〒683-0811 鳥取県米子市錦町1丁目2313-9 
〈駐車場13台〉

Googlemapで見る

お問い合わせTEL

0859-32-2355