けんさく先生の日記

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2023.02.15

名前を考える

 私は『健作』という名前ですが、子供の頃は改名できないか悩むくらい嫌いな名前でした。よくクラスメートから『抜作』と呼ばれることがあり、それをたまたま聞いた小学校の担任の先生が終わりの会で議題として取り上げ、先生が『山田は抜作なんかじゃない。○○(呼んだクラスメートの名前)、お前の方が抜作だ』などの発言を聞き、子供心に更に傷ついた覚えがあります(担任の先生はよかれと思って言って頂いたと思いますが)。また森田健作の代表曲『さらば涙と言おう』を歌いながら毎回私に近づいてくる剣道部の顧問の先生がおられ、自分もどうリアクションをとっていいか分からず、それにも悩むこともありました。『山田』という苗字も含めて古臭い感じがしましたし、今でいうところのキラキラネームにあこがれてた時期もありました。ちなみに私の名前の由来は父方の祖父が『山田知作』で、私の名前に『作』の一字を入れることは決定していたようですが、その後『一作』『八作』など個性的な名前がライバル候補として挙がる中、最終的に『健作』に決定したと聞いております。

 先週末に『第6回勤労者医療フォーラム』という会をWEBで聴講していました。副題は『糖尿病医療における障害(スティグマ)とアドボカシー』でした。スティグマ(Stigma)とは恥・不信用のしるし、不名誉な烙印という意味で、いわれのない差別や偏見の対象となることです。『糖尿病の患者さんは食べ過ぎである』『自己管理ができない』『生活習慣が乱れている』というレッテルが張られ、実際に糖尿病患者さんが生命保険に加入できない、住宅ローンを組めない、就職ができない、などといった不利益な事態を被る事例が出ています。糖尿病に関しては本人の生活習慣だけで発症するものではなく、遺伝的な要因などもあり、血糖コントロールの悪化も含めて自己管理の影響だけではありません。糖尿病に関しては色々な合併症を起こす、また並存症のある病気ではありますが、昔のイメージで『不治の病』『寿命が10年短くなる』などと間違った糖尿病のイメージがまだ残っていることがあります。しかし糖尿病の治療と予後は以前に比べて大きく改善しており、糖尿病の患者さんの状況も昔と変わっております。アドボカシー(advocacy)とは、こういった糖尿病の患者さんの権利を守り,社会的地位を回復させる活動を指しています。

 昨年11月に糖尿病の名称変更の話題がニュースでも取り上げられました(糖尿病の病名変更を提唱へ“不正確でイメージ悪い”専門医団体 | NHK | 医療・健康) 糖尿病は英語でdiabetesと言いますが、diabetesに尿から糖が出るという意味はありません。血糖が高いと尿に糖が出ることはありますが(尿糖)、これが糖尿病の病気の本質を表してはいません。『尿』ということばから不潔なイメージで見られるなどとして、多くの患者さんは抵抗感、不快感を感じております。病名に対して負のイメージを持つことが患者さんの生活や治療などにも影響が出る可能性もあります。病名の変更は特に珍しいことではありません。『痴呆症』が『認知症』に、『精神分裂病』が『統合失調症』に、『成人病』が『生活習慣病』に変わり、疾患のイメージは若干変わりました。しかし生活習慣病こそ生活習慣で予防できないものも含まれ(糖尿病も含まれます)、この名称こそ変更すべきという意見もあります。

 私の名前の話しに戻りますが、今ではこの『健作』という名前は気に入ってます。下の名前で覚えてくれる方がおられますし、普段色んな方にお会いしますので、下の名前でも覚えて頂くのは非常に有難いことです。名前というのは段々と人間になじんでいきますが、病気の名前もなじんでいっても、それで苦しむ人がいるのであれば名称は変更は検討してもよいと思います。糖尿病という言葉があまりに浸透しているため困難なことだとは思いますが、変更するのであれば大半の方が納得される、また今後の糖尿病患者さんのアドボカシー活動の支えとなるような名前を期待したいです。

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